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粘土系の瓦は日本に古くから伝わり、地方では陶器瓦の屋根が今でも多く、特に入母屋などの和風建築には欠かせない。都市部ではシンプルですっきりしたデザインのスレート系の彩色石綿スレートか彩色スレートが中心に普及し、洋風住宅の主流ともいえる。
価格は彩色石綿スレートの普及品が一番安く、この上がプレスセメント瓦かコンクリート瓦、彩色スレート、その上にくるのが陶器瓦、アルミ合金などの金属系、さらに最上級がいぶし瓦や天然スレートとなっている。
屋根の形で施工費が変わることに留意を。切妻より寄棟、また軒の出が深い、勾配がきつい、重なり部分が多いといった屋根では、瓦の使用量が増えるため、結果として金額も上がる。
何れも一定以上の性能水準を確保しているが、耐候性、重量、価格の面での違いが見られるのは確かなので、家の構造や地域の気候、予算を考慮して選ぶようにしたい。
リフォームは年月の経過とともに褪色しやすい石綿・セメント系や、錆が発生しやすい鉄板の屋根などは、定期的に塗替えをすれば劣化を防げる。雨漏りは原因を確かめて屋根材の取替えや葺被せをする。劣化がひどいと下地からの大工事になる。屋根材の変更は勾配で使える材料が限られることに注意。既存よりも重い屋根材に変更するのは構造上避けた方が安全。☆主な屋根材の種類と特徴
粘土系
陶器瓦…瓦形にプレス整形した素地に釉薬を施し焼成したもの。和瓦の形状のほか、平型など洋風住宅に合う製品も増えている。現在では色はグレーが主流で、色落ちしないのが長所。
いぶし瓦…陶器瓦と同様にプレスした瓦で、焼成過程でいぶして銀色の炭素膜を表面につける。自然の光沢が長く色落ちせずに保たれる。形は色々にできるが、伝統的な和瓦が多い。
スレート系
彩色石綿スレート…セメントに石綿を混入した薄い板状の素材。天然のスレートの形状を模していることからこの名前が付いた。軽量で施工しやすく、安価なことから現在広く普及。形状、色とも豊富。
彩色スレート(無石綿)…セメントを原材料に、石綿の代わりに特殊な繊維を混入した、比較的新しい屋根材。こちらも軽量で施工しやすく、一部に波型など立体感のあるデザインの製品もある。
天然スレート…玄昌岩(粘板岩)を材料にした本来のスレート。自然の黒く艶のある色が、褪色せずに保たれ、独特の重厚感のある表情が特徴。日本産以外に、最近ではヨーロッパ産のものもある。
セメント系
プレスセメント瓦…セメントと細骨材(砂)のモルタルが原料。形は和型など様々だが、最近は平型が増加。スレート系より材料が厚く、その分屋根にどっしりした表情が出る。
コンクリート瓦…細骨材に対するセメントの割合がプレスセメント瓦よりも少なく、押出成形方式で作られる。ヨーロッパでは古くから作られている。立体感のある形状が多く洋風住宅向き。
金属系(鋼板、アルミニウムなど)…カラートタンが代表例だが、現在では平葺タイプや金属成形瓦など機能・デザインともトタンを超えた製品が出ている。最も軽い素材で地震に強く、水分を吸収しないのが特徴。